カルロス・ベナイムの卓越した美的感覚は、モロッコのタンジールで天然香料に囲まれて過ごした幼少期に育まれました。そして、伝説的なアメリカ人調香師アーネスト・シフタンの下でのトレーニングを経て、より大胆で勇壮な美しさを手に入れます。彼が生み出す非常に優美なアコードは、彼に宿る神秘的な審美眼のなせる技なのです。

ピエール・ブルドンは政治学の学位を取得したのちに、大きく方向転換をし、グラースにあるルール・ベルトラン・デュポン社の調香学校に入学します。そして、フレグランス界に於いて最も偉大な調香師の一人である、エドモン・ルドニツカの唯一の弟子として学びます。彼の調香師としてのキャリアは 70 年代にパリのルール社で始まり、1980 年代には〈ダビドフ〉の「クール ウォーター」でフレグランス トレンドに革命を起こします。今日、ピエール・ブルドンは彼の世代における最も革新的な調香師として知られています。

ジャンクロード・エレナは、グラースの調香師の家系に生まれ、 10 代の頃から芸術的なフレグランスの創作に取り組んでいました。彼は独学で学び、自身の創造を 記憶の詩 と定義しています。毎日触れる香り：床のワックス、洗い立てのシーツ、肌、着古したセーター、それら全てが彼のインスピレーションの源なのです。ジャン クロード・エレナは、決して声を張ることはありません。パルファムには余計な叫びも、衝撃も必要ない、と考えているのです。彼は非常にシンプルで、ミニマリスティックで、モダンです。そんな彼のスタイルは、よく水彩スケッチ や室内楽に例えられます。

そして、エルメスでの専属調香師から離れた後の第一作目として、2019 年には、フレデリック・マルと共に到達した新境地で「ローズ キュイール」という、彼の最高傑作ともいえる作品を生み出しています。

エドゥアール・フレシェは、彼の世代で最もクリエイティブな調香師として知られています。

1949年にグラースで生まれた彼は、科学を勉強したのち、ルール・ベルトラン・デュポン社の調香学校で学びます。その頃から、生来の類稀なる嗅覚の才能で天才と呼ばれていました。そして80年代半ばにはルール社でスター調香師に就任し、その時代を彩る数々のフレグランスを調香したことで、広く知られるようになります。彼のシンフォニーを奏でるように寛大なスタイルは、現代的でありながらも、フレンチ パルファムの伝統に根差しています。何より、大胆な構成と生来の優れた感覚が、彼の作品を特徴づけています。

アンヌ・フリッポは、 想い出を香りに昇華する“ 香りの翻訳者”です。緑が生い茂る田園が広がるフランス北東部で子ども時代を過ごしました。 若い頃から、天候や季節、ライフサイクルなどの変化、自然界に対して、人並外れた感性を持っていました。フレグランスにおいては、専門知識や技術を用いて、彼女自身の思い出を再構築する方法を見出しました。自然を愛する彼女自身の情熱と緻密な職人技を結び付け、彼女が思い描く香りの世界を他人と共有するプロセスを通じて、最も尊敬を集める“マスター調香師”の 一人 となったのです 。

新世代の職人たちの先頭に立って時代をリードしながら、彼女はすばらしいレディース フレグランスやメンズフレグランスを数多く生み出してきました。フローラル グリーンの香りが大好きであると公言してきた彼女が、 ＜フレデリックマル のために手掛ける初のフレグランスとして 「 シンセティック ジャングル 」を選択したことは自然なことであると言えます。

彼女は、ロベルテ社で調香のトレーニングを積んだのちに、イスキアという、自身で設立した調香ラボラトリーに専念する形でキャリアを積んできました。彼女を調香に駆り立てるのは、『ありふれた日常と、自然の中にふと発見される‘エコー’。空間を飛び交う情感やムード、細部へのこだわり、そしてそれ自身の生きる姿勢・・・。』ありきたりで些細な一瞬の真実が、彼女に常に新しいイメージをもたらすのです。彼女が生み出すコンポジションは、ごくシンプルでありながら、コンテンポラリーな洗練を極めています。

香水の女王とも呼ばれるソフィア・グロスマンは、幼少期をベラルーシで過ごし、玩具などへの関心は一切示さずに、バラやジャスミンの花々に囲まれた庭を走り回りながら育ちました。その後、大学で化学を専攻したのちに、ニューヨークへ移住し、 IFF （インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス社）のラボラトリーに入社。そこで、当時アメリカでは最も著名な調香師として知られたアーネスト・シフタンのもとで、調香の技術を学びます。そして彼女は、オーバードーズというクラシックフレグランスの方程式を覆す、大胆なテクニックを初め て試みた事で知られるようになります。フレデリック・マルと親しかった彼女は、その依頼を受けて「アウトレイジャス」という、彼女の作品の中でも、非常に珍しいメンズ フレグランスを生み出すことになりました。

スージー・ル=エレーは、フランスにある著名な調香師養成学校「ISIPCA」とドイツの「シムライズ パフューマリー スクール」で修練を積んだ調香師です。彼女を指導していたマスター調香師アニック・メナルドとモーリス・ルーセルによって才能を見出された彼女は、現在、フレグランスハウス「シムライズ」でその能力を発揮しています。

彼女は、天然香料の生産者に出会う旅や日常の中で発見した様々な植物や香り、風味をインスピレーション源としています。幼少期から植物への関心が強かった彼女は、合成香料や合成素材の開発にも携わり、調香師が用いる香りのパレットを充実させることにも貢献しています。彼女が好むのは、それぞれの香料に明確なメッセージを持たせた、短く、正確で、分かりやすい処方です。

「フレグランスは、いつだって美的感覚と感情に訴えかける卓越した技術を用いて、メッセージ性のあるものに仕上げなければならない」と彼女は言います。

ドミニク・ロピオンの調香のトレーニングはフランスの名門ルール・ベルトラン・デュポン社で始まり、フレグランス界で最も著名な技術者として知られるジャン ルイ・シュザックとのパートナーシップを組むことで、その才能は大きく飛躍しました。そして彼は今日、 IFF （インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス社）のマスターパフューマーに就任しています。ドミニク・ロピオンの作品が特別なものとなる所以は、彼自身のまぎれもないパーフェクショニズムと、自由さ、創造への探究心、そして、相反する性質の香料さえも見事に調和させる卓越した感覚にあります。

モーリス・ルーセルは、1973 年に化学者としてシャネルのラボラトリーで働き始め、その後、独学で調香師へ転身しました。ムスクやホワイトフラワー、そしてアンバーを好んで使用する彼の伝説的な調香スタイルは、よく、大胆なセンシュアリティーにあると言われますが、綿密なメソドロジーを駆使する、彼の根本にある化学者としての気質も、そのフレグランスから窺い知ることができます。モーリスが持つ、トレンドをはるかに超越する個性的なパーソナリティーにより、2000年に「ムスク ラバジュール」は生み出されました。当時、フレグランス業界を驚かせた、このパルファムは、今日のアンバーの名香として知られています。